2015年10月14日水曜日

釜トンネルを抜けて上高地へ

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上高地へ行くなら、徳本峠を越えるクラシック・ルートだろう!・・・と、ベテランの方なら仰るところでしょうが、無理ですから。
担がないで済む釜トンネル経由でも、それじゃ足つき無しで上れるか?って訊かれたら、多分無理でしょうと答えざるを得ません。では何のために沢渡から自転車漕いで、30kmに満たない道(殆ど国道)を走ったのか?と問われれば、答えは一にも二にも、アルピコ交通のバス代を節約する為ですっ(ちなみに往復2050円ですっ)
前日の乗鞍の疲れを感じながら、眠い目をこすりつつ車を運転して沢渡温泉へ。上高地へバスで向かう人が利用する駐車場の誘導をしていたオジサンに、自転車で向かうつもりだが駐めてもよいかを尋ねると、料金は同じとのことでお願いすることにします。夕方の六時に床に就き、優に十時間は爆眠したあとだったので、前日山を下りた時に感じた泥のような疲れはあらかた抜けていたのですが、それでも何となく、上高地までバスで行ってのんびり歩くのもいいかなぁ・・・と思い、バスの料金をオジサンに尋ねてみました。「往復2050円だけど、折角だから自転車で行ったら?釜トンネルを上るのが大変だけど、自転車の人はみんな、楽しかった!・・・って言って呉れるよ!」なんて、頼もしい言葉で背中を押して頂きました。バスになんか乗っていたら、あとで絶対後悔するのが分かっているのに、中途半端な妥協をしないで、本当に良かったです。。。自転車を組み立てながら、管理人の方や客待ちのタクシーの運転手さんと話が弾みます。「ひょっとしたら、お昼前辺りにぱらっと降るかもしれないけれど、酷くは降らない筈。釜トンネルを下る時は気を付けて、ゆっくり行ってらっしゃい!」の言葉に送られて、六時半・梓川を遡る国道へ自転車を漕ぎ出しました。
一昨日の夜R158を走って来た時は、高山方面へ抜ける長距離トラックが多く先が思い遣られましたが、本番である連休最終日のこの時間帯は、幸いほとんど車の往来は無く、快適のひとこと。青看には「上高地  11km」とあり、釜トンネルの先までの距離なのか、それともバスターミナルまでの距離なのかが分かりませんが、いずれにしろ二時間より多く時間が掛かることは無いでしょう。目の眩むような高さの橋から、梓川の渓谷美を楽しみながらペダルを漕いでいると、あっという間に釜トンネルに着いてしまいました。
旧トンネルは暗くて狭くて曲がりくねっている上に、急坂の洞内を川のように湧水が流れている・・・と、諸先輩方から聞いていたので、もしそちらへ誘導されたらどうしよう・・・と案じていたのですが、ゲートの門番の人に挨拶すると、新トンネルを通って良いとのこと。但し、こちらも路面が濡れているとのことで、しかも温泉質なので滑りやすいとのこと。バスターミナルから先は自転車の乗り入れは禁止とのことで、自然環境事務所・営林署・砂防事務所連署の駐輪場案内カードを渡されました。「大事なことですので、必ず守ってくださいね」と門番の方に念押しされたので、必ず駐輪場から先へ自転車を乗り入れない旨を約束して、坑門を潜ります。「トンネルは1.4kmくらいかな?頑張ってね」と、励まして戴いた手前カッコつけて、何故かインナーに落ちない自転車を立ち漕ぎ開始。全灯・フラッシヤー点灯!
坑門の上の方に、なかなかヤル気を煽る標識がぶら下がってますなぁ~
平均勾配11%とかwww

新トンネルは曲がりくねってはいるものの、照明は明るいし、道幅広くその気になれば十分な幅の歩道もあるし、路面が濡れているのも中湯側の200mだけで、ここは下る際に注意すればいいわけですが・・・
勾配については、聞きしに勝るものがありました。。。(>_<)
軍手シフトでインナーに落とし、前30-後30Tのギヤ比1:1でヘコヘコ進みますが、全然進まん・・・入口から300mほど、トンネルがカーブして先ほどの門番の人からこちらが見えなくなったことをしっかり確認した上で(^ ^;)最初の足つき。非常口案内板が逐一、残りの距離を教えてくれるわけですが、凹みますなぁ~休み休み2/3ほどはペダル漕いで上がりましたが、残りは自転車を歩道に上げて押し歩き。いずれにしても這う様なスピードでしか進めませんが、バス・タクシーの運転手さんが、十分な余裕を以って追い越して下さるのが有難いです。
結局30分ほど掛かり釜トンネルを脱出。中の湯の標高が1300m・上高地側の坑口前でGPSは1480mを指していたので、勾配は標識よりもちょっと大きいかもしれません。上り坂はキツイですが、びしょ濡れになるのを覚悟していたので、拍子抜けする位あっけなく上高地にやって来てしまったな・・・というのが偽らざるところ。トンネルからの道はほぼ平坦で、右手に焼岳を眺めながら自転車を走らせます。10分も掛からず大正池の神秘的な湖面が見えて来ました。1915年の焼岳の噴火で出来た堰き止め湖。南端の湖岸から往く手に目を遣ると、前穂高・明神岳・長七ノ頭が朝日を浴び、折り重なるように聳えています。池にある立ち枯れの木々の景観は、1928年に「上高地」が史蹟名勝天然紀念物保存法による「名勝及ビ天然紀念物」に指定される際の理由の一つとなったとのこと(wikipedia『大正池(松本市)』より)ですが、大正池の水深は浅く、梓川が運ぶ土砂のため年々浅く、湖面も小さくなっていて、後述する霞沢発電所の霞沢発電所としての機能を維持する為に東京電力が行っている浚渫を仮に止めてしまうと、「・・・7-8年もすれば、池は土砂で埋まってしまう」(同じくwikipediaより)というほど、か細い命を繋いで、神秘の湖はこの場所に佇んでいるらしいです。立ち枯れの木も年々減っているとの話ですし、なんと儚い風景なのでしょうか。。。
大正池ホテルから緩い坂を下ると、湿原のような場所。ここが田代池・・・なのでしょうか?藻が揺蕩う水鏡にシラカバの森が映って、得も云えぬ静謐な印象を与える場所ですが、離合を許さないほど道幅が狭いので、車の往来は結構忙しく、慌ただしくシャッターを切って自転車を発進させます。カラマツの森を往く道。まだまだ緑という印象で、黄葉はあと一~二週しないと始まらないかも。本番ウェストン碑へ向かう遊歩道の案内が上高地帝国ホテルの横にあり、迷いますが、とりあえず予定した明神池へのコースを歩いた後で時間が許せば・・・ということで、バスセンターへ向かいます。
みっしりと地を覆う笹薮の間に、木道が延びているのが見えて、いよいよきたなという雰囲気。「ビャー」と20km/hほどで走ろうと思えばできるのですが、霧の湿り気を含んだ朝の森の空気が、あまりに気持ちいいもので、ついついノロノロと走ってしまいます。バスやタクシーの運転手さんから見たらいい迷惑かも(^ ^;)それにしても、バスやタクシーで河童橋に向かうみなさんは、大正池くらいは車から降りてご覧になるのかもしれませんが・・・ちょっと勿体ない気がします。
久し振りに人の話し声が聞こえる・・・と思ったら、お客さんを呼ぶバスの案内嬢の声でした。少し森が開けたことを感じると、いきなり広い駐車場と、近代的な観光センターの建物が現われました。駐車場の入口で掃き掃除をされていた女性誘導員が手を振って注意を促すので近付くと、自転車はここまでとのこと。釜トンネルの入口で貰ったカードを見せると、右脇の駐輪場にお願いします、とのこと。駐輪スタンドが木で出来ている凝った造りで、この辺から上高地に来た事を感じさせる粋な演出を感じさせますが、どちらかというと、バイクラックの方が有難いかな~?九時前に着くことが出来た(沢渡から15km・2時間20分・・・)のですが、ハイキング用に身支度を整えたり、観光センターで朝食を摂ったりで、歩き始めたのは九時十五分を回っていました。

河童橋が見える場所まで歩いた所で、肝心のGPSロガーを自転車から外すのを忘れたことに気が付きました。。。小走りで取りに戻る途中、先ほどの誘導員の方と目が合ったので挨拶。「今日はどちらまで行かれるのですか?」と問われたので、明神池まで歩くつもりであることを伝えると、コースタイムや途中の分岐・見所など、本当に丁寧に教えて戴きました。朝いちばん良い出会いがあって幸先がいい・・・と、気分良く歩きだした上高地。この後予定通り、四時間ほど掛けて明神池まで往復し、十三時過ぎにバスセンターへ帰って来たのですが、その時、切実に、「帰りたくないよ~(泣」と感じてました。
皆さん口を揃えて「上高地はいいよ!まだ行ったことないの?」とか仰いますし、一方私は、常々ご覧いただいている通り、へそ曲がりの甘ったれですので、そんな筈はない、誰もが知るメジャー観光地ならきっと驕っている筈、どこか貶してやろうと思い、目を皿のようにして歩いたのですが、文句をつけるどころか・・・全てが素晴らしかったです(溜息
知人が上高地の虜になり通っているのを見て、同じ所に何度も行くなんて・・・と訝しんでいたのですが、実際足を運んでこの景色を目の当たりにすると、納得です。後ろ髪を引かれる気持ちで大正池まで走り、道路脇に自転車を停めて湖岸へ降ります。早くも残照を感じさせる陽を受けて、燃え上がる様な美しさの穂高岳。未だ色づいていない湖面に映るカラマツ林を見ながら、富士山五合目はもういいけれど、上高地は違う季節にまた是非来てみたい・・・と切実に感じました。
昭和初期型のお嬢さん達の記念写真を撮って上げたり、逆に写真をお願いしたりして三十分ほど過ごし、大正池を後にします。焼岳に見守られながら釜トンネルの前まで来ると、いよいよ上高地ともお別れ。あ~ホント、心の底から、切実に、帰りたくないですわ~(T T) 色々な場所で自転車を漕いだけれど、こんな気持ちになったのは、初めてかもしれません。


往生したトンネルをスイスイ下って、朝の門番の人に挨拶しました。釜トンネルの下りはスピードが出過ぎて注意!というか、二週間前にロードバイクで下って来た人が温泉が流れている部分で転倒して、救急搬送されたとのことですので、皆さんもお気を付け下さいね。 釜トンネルの名前は、傍を流れる梓川の急流「釜ヶ淵」にちなんだものですが、水しぶきを立てながら流れている梓川の様子が、まるで湯で釜のように見えたことから、この様に呼ばれるようになったとのこと。新トンネルが出来る前は県道から見える釜ヶ渕堰堤も、上高地のアイコンの一つだったとのことですが・・・二時間前、明神橋の袂で手を浸して、清冽さに心を打たれた梓川を眺めることが出来るのも、残りあと数時間。この流れが千曲川を経て、日本海に注いでいるんだねぇ~←立松和平風に脳内再生プリーズ  ・・・何か物凄いものが視界の隅を掠めた気がして急停車。いつのまにか右岸を走っている梓川の対岸に、水力発電所の建屋が見えるのですが、背後の山から駆け下ってくる導水管が壮観。ここが先ほど大正池の浚渫を行っていると触れた東京電力の霞沢発電所。最大出力は39000kw ・旧釜トンネルはこの発電所の工事の為に作られました。R158を走ると目に飛び込んでくる高低差400mの鉄管の水路は、大正池の取水堰に始まっています。地形図で確認すると、鉄管最上部の溜池と大正池の標高がどちらも1500m弱なので、もう、こんなに下って来てしまったのかぁ~と、何となく寂しいような。。。見覚えのある沢渡の集落が見えて来ました。もう本当に、終わってしまうんだなぁ~。。。14:15・車を預けた梓駐車場に到着。

朝方は五分程度の入りだったのが、完全に満車。パッキングだけでなく、お風呂の準備などもあるので1時間以上掛け、モタモタと出発の準備を整えますが、例のオジサンは急かすでもなく山の話。上高地で買った飲物の開いたペットボトルに、駐車場の水汲み場で湧水を入れて、エンジンを掛けます。山のお水でコーヒー淹れると美味しいんですよ~こういう楽しみの為にも、ゴミ持ち帰らなきゃいけませんね。
車を出す際に挨拶すると、「気を付けて、お帰り。」
それはもう、二十年前他界した、信州出身の祖母と同じ、聞き間違いようがないイントネーションで、何かこんな所でも、最後の最後まで思い出深い旅になったのでした。

帰宅後写真を整理しながら、現地にいる間は気が付かなかったあることに気がついて、猛烈に感動したのですが、そのことはまた、別の機会に。




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番外編 乗鞍岳に挑戦! (・・・でも、断念っ!!)←新タブで2015年10月11日付記事が開きます。

2 件のコメント:

横尾寿秋 さんのコメント...

釜トン自転車で上がったんですか!!!
こりゃあ驚きです!
今の釜トンは確か五代目くらいでしたっけ、、
昔の釜トンはバス2台ギリギリですれ違う超暗いトンネルで
バスに乗っていても怖かったですよ

釜トンの一体は相当崩れやすい見たいで、、五代目もいつまで持つのやら??と
いらぬ心配をしています

しかし、、上高地迄自転車でいく人が今は結構いるんですね~~
自転車ブーム恐るべし!

ボラザぢぃ さんのコメント...

タマチャリンさま
こんばんは~\(^o^)
今の新釜トンネルって五代目なんですかっ!?(゚Д゚)
トンネルが川みたいになっているから、雨具もってけ!・・・といわれて、
ザックに放り込んでおいたのですが、今のトンネルで水が流れているのは
中ノ湯側にちょっとあるだけで、幅も仰るよりずっと広くて歩道もあるし、
照明も明るいしで、勾配を除けば、走り易い部類のトンネルかな・・・と思いました。
タマチャリンさんが仰る旧トンネルも横に口を開けているので、歩行者や自転車にだけでも
開放してくれると楽しみが増えるのでしょうが、そうは出来ない理由がきっと、
何かあるのでしょう・・・
乗鞍みたいに自転車銀座ではありませんが、駐輪場には他に一台小径車があったので、
おバカさんは私ひとりじゃないんだな、と・・・(^ ^;)
梓川沿いの道・釜トンネルから大正池までの道も中々景色が味わい深いので、
バス・タクシーで通り過ぎてしまうのは勿体ないかな、とも感じました。
本文に書きました通り、私が自転車を用いたのはもちろん、お金が無いからでありますが・・・(^ ^;)
コメントありがとうございます!m(_ _)m